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コラム―臉譜図鑑 その男、包拯
この人を一言でいうなら“中国の「大岡越前」”。お金に惑わされず、権力に屈することなく、公正無私でひたすら正義を貫くという姿勢は徹底していて、清官(清廉で公正な官吏)として庶民に圧倒的な人気があります。 その潔癖さは凄まじいものがあり、賄賂を贈って地位を得ようとした自分の従兄弟まで容赦なく断罪してしまいます(京劇「斬包勉」)。責める伯母に対して、人を裁く者として自分が肉親の情に負けては民に示しがつかないと申し開きをする(京劇「赤桑鎮」)という極めてストイックな人です。 彼を題材に取ったテレビドラマも作られていて、近年では「少年包青天」というドラマがあります。まだ仕官していない若き包拯青年が難事件や怪事件を明晰な頭脳とずば抜けた行動力で解決していくというものです。ここでも若いながら正義の人としての性格はそのまま。人気があってパート2も作られました。 このドラマのトリックや謎解き、演出や音楽、カメラアングルに至るまで「これ、どこかでみたぞ」と思うのですが・・・日本のテレビドラマやマンガはアジアでも大人気です。そういえば「金田一少年の事件簿」、「名探偵コナン」は日本でものすごい人気でしたね。 ちなみに青年の頃の包拯は地方劇でも登場します。地方劇でもそのキレた性格から臉譜を施しますが、若くてまだ一人前ではないので色を施すのは顔全体ではなく額から三分の二、顎の部分は色を塗りません。また、やはりまだ若いというのでヒゲもつけません。 京劇では青年姿のものは見たことはありませんが、包拯が登場する芝居は多く、いずれも人気があります。 包拯は京劇の行当では「浄」、臉譜はマックロケです。黒は実直で高潔という意味を持っています。役柄としては「唱」を主とする「唱工花臉」です。「唱工花臉」を別名「黒頭」というのは、紛れもなくこの包拯の臉譜に由来しているのです。 包拯は人気のあまり民間では神格化されています。日中は「この世」で裁判、夜は「あの世」へ行って閻魔さまのお手伝いで裁判をしているということになっています。京劇「zha[金+則]判官」という芝居の「探陰山」という一幕では「あの世」に行って被害者の霊魂に会い、供述を引き出すという裏技を使って事件解決を図ります(ここの唱は痺れます)。 臉譜の額に流れるように描かかれているのは「月」です。「この世」にいるときは正面からみて三日月は左にカーブ、「あの世」にいるときは黒色の沙を頭から被って(これで肉体から抜け出した霊魂という意味を持ちます)額の三日月は向って右にカーブを描いています。まぶたの上の白い線は眉を表し、頬は黒いながらもほんのり朱がはいって血行の良さ(?)が出ています。口元には「黒満髯」という真っ黒でびっしり生えている長いヒゲをつけます。 包拯の衣装は黒色の生地に豪放な花臉の性格を表す龍の刺繍、「福」と「壽」いう縁起の良い文字などが入っています。 「烏盆記」(又の名を「奇冤報」)では猟奇殺人で無念の死を遂げた霊魂の訴えを聞き、「遇皇后」「打龍袍」では皇帝の機嫌を損なうとわかっていながら事を正すために諫言し、「秦香蓮」(「zha[金+則]美案」という一幕)では「相手が皇族でも罪は罪」と判決に自らの地位と命を賭ける正義の人、包拯とはそんな男です。 関連ページ→[ギャラリー―京劇臉譜画 冥界] |
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